木枯らし
- mihoko nakamura

- 1 日前
- 読了時間: 2分
夜中、風の音で目を覚ました。
轟々と吹き荒ぶ風は真っ暗な木々をこれでもかと揺らしていた。
そろそろ毛布だけでは心許ないような気温になってきている。
そうなのだ、もう秋が終盤で冬がその体だいぶ綻び始めた秋の裾のあたりからめりめりとその体を捩じ込んできているのだ。
あぁ冬。 年齢を増すごとに夏よりも冬を恋慕うようになってきた。
冬のあのピリっとした雰囲気がとても好きになってきた。
空は澄んで、星が沢山見え、海は冷たくも恐ろしく透明度が上がって海底がとても近く感じられる。いつかの冬の夜、船着場を通った時にいつもより海が黒く見えた。底なしかと思うくらいに真っ暗な水面を除いていると突然、黒い塊が形を変えて真ん中にぽっかりと薄い、本来の鈍色の砂地が覗いたのだ。
黒い水だと思っていたのはずべてカタクチイワシの群れだった。
こんな小さな港に押し寄せるように現れたイワシたちは水中で渦巻く雲のように形を変えながら泳ぎ続ける。その美しさと不思議さに寒さも忘れて観入っていた。
あれから久しく、冬の夜に港を訪れることはなかった。
連れて行けとせがむであろう子らが海に落ちるのが怖かったのだが、そろそろ大丈夫だろうか。今年の冬あたり、久しぶりに覗きに行ってみようと思う。
もちろん、温かい格好で。熱い紅茶でも水筒に満たし、ブランケットも三枚必須だ。
そんなことを思いながら木枯らしの音を聴きつつまた眠りについたのだった。





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