
ivory books
No.6

薬指の標本
サイダー工場の事故で薬指の先を切断した若い女性が、標本技術士の求人広告をみつけ採用される。
古い女子寮を利用した標本室には様々なものが標本として保管されていた。
飼っていた文鳥の骨、焼けた家屋の跡地に生えたキノコ、かつて恋人より捧げられた愛の楽譜…
依頼人は標本にしたいものを持ってくるが、誰一人、保管している標本を確認しにきたりはしない。
なぜなら、彼らは想いのつまったそれらを自分の記憶や心から取り出し、処理を施し完了させるために持ってくるからだ。
妖しくも蠱惑的な雰囲気の漂う物語。
小川 洋子
「博士の愛した数式」が映画化されたのでご存知の方も多いのではないでしょうか?
あの切なくて暖かい物語とは一味違う、少し不穏でどこかエロティックな雰囲気が終始漂う短編です。
サイダー工場の事故で無くした指の先っちょが、よく回想や彼女の独白に登場するのがセンセーショナルですが、古いアパートの部屋を利用した標本保管室の情景に
自分が高校生のころに、時々足を運んでいた高校の理科準備室を重ねてしまいました。
準備室とは名ばかり、生徒はおろか教員すら滅多に出入りしない埃っぽい部屋の棚に並ぶ標本達を眺めてみたくことがあって、理科室の鍵が空いていた時はこっそり昼休みなんかに入って眺めたりしていたことを思い出しながら読み終えました。
標本技術士の弟子丸氏への想いから自身を標本にしてしまうことまで夢想してしまう主人公の倒錯的な雰囲気を表現してみようかと思い思いつく限りの標本っぽいものを描き出してみました。途中から標本を考えるのが楽しくなってしまって主人公の存在がちょっと薄くなってしまったかもしれません。
太さの異なる白いペン(jerry role)を使い分けて黒い厚紙に描き、ちょっと標本チックなラベルをイメージしてタイトルや裏表紙を作ってみました。
楽しかったです。