シロアリが御幸ビルディングを根城にしてどれくらいの時間が経っていたのだろうか?
少なくとも2年前にはすでにこのビルの中に侵入してきていたことは間違いない。
なぜなら2年前の梅雨時期、私は悪夢のような現実を目の当たりにしたからだ。
2年前の梅雨の始まりに、古本コーナーの整理をしていた時、壁に取り付けた本棚の下に土塊がぽろぽろと落ちていたのを見つけた。嫌な予感が頭をよぎった。
この形状の砂は以前にも見たことがある、と。
中古のマイホームを手に入れた矢先に家の中にあった土塊と同じだ。この土があったところにはシロアリがいる!!
恐る恐る、本を避難させて壁に付けた本棚を外した瞬間!!
頭の中が真っ白になった。高校時代に自室のスケルトンのMacがクラッシュした時の画面みたいに。
裏返した本棚の背中には現在進行形でせっせと王国の領土を広げんとする働き者のシロアリたちがおり、数匹はフリーズ状態の私を見上げて小首を傾げているようにも見えた。錯覚だ。
けれどもシロアリ自体は現実だった。急いでガムテープを取りに事務机へ走り、シロアリが一生懸命掘削中の棚の背面部を封鎖。現場に取り残されたままのシロアリたちは家族にさよならを言う暇も与えなかった。
次に、壁の見る。
棚のついていた壁はタイル張りである。元は銀行の従業員トイレだったからだ。そんな壁には昔、配管を通していた穴があったのだが、そこをリフォームする際にパテで埋めたのだったが、そのパテが食い破られていた。
ペジテのセンタードームが王蟲に食い破られた惨状を見た時のアスベルの気持ちがわかった。
翌日にホームセンターでシロアリ撃退スプレーと屋内用パテを再び購入し侵入経路である配管と壁の隙間に吹きつけまくり、店の外壁にも木という木に、穴という穴にスプレーを吹き付けた。シロアリ大虐殺、シロアリ帝国Xデーである。
滅ぼした帝国のあとに再び、棚を付け直して本を並べ翌年は特に何事もなく店を営業できていたと思っていたのに。
2年後の今年、シロアリ帝国の残党は御幸ビルディングの壁と天井を占領してついに2Fの共用キッチンの天井に到達。悪夢再びである。
昼夜関係なく羽付きシロアリが飛び交い、這い回る惨状にビルの全員が戦慄。
ビルの管理をしている工務店がついに腰をあげてくれたのであった。
プロのシロアリ駆除業者が惨状をを目にして絶句。
業「相当やられてますね。特に本屋さんのところが・・・」
私「そんな予感はしていたんですが、やはり。」
業「早急に駆除します。1日かかりますので臨時休業をお願いします。」
かくして人類によるシロアリ帝国への鉄槌が下されたのである。
それにしても恐ろしい。
九州に住んでいた頃は大好きだった「西日本シロアリ」のCMが、あんなコミカルで明るいCMなのに実際のシロアリの被害は全然笑えないのであのコミカルさのギャップにホラーを感じてしまった。(だけど、今でもCMは大好きだ。)
ということで臨時休業に際しては自分の心情を表すためにホラー映画「シャイニング」
をパロった絵を描いてSNSであげた。劇中のあのドアを斧で壊して割れたところからジャックが顔を覗かせるあのシーンのあの恐怖感、まさにシロアリが穴の中から這い出て来た時の恐怖と一緒だった。どうかもう出てこないで欲しい。
シロアリ帝国の冥福を祈るとともに、御幸ビルディングの安全を願うばかりである。
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